校長室

2022年9月の記事一覧

天気の子

県高等学校新人登山大会が猫魔ヶ岳・雄国沼山域で9月22日~24日に開催されました。私は23日~24日と観戦してきました。以前に書いたように(「18年ぶり(その1)」参照)同じコースを登り、選手の試合運び(登山行動)を見ることが登山大会の観戦です。

23日。天気は熱帯低気圧から発達した台風の影響で朝から少雨です。雨天行動技術を見るには絶好の天候。

雄子沢登山口から雄国沼に向かう途中の休憩。選手諸君は読図に余念がありません。

ちなみに、写真の地点は2万5千分の1地形図でAの地点です。行動中にBの地点で読図課題が出されました。1ミリ(実際の25メートル)ずれると正解とは見なされません。

雄国沼を通過中。小雨は続いています。

猫魔ヶ岳(標高1403.6m)の三角点ピーク。登山隊長は雨の中、無線の入るピークで待機し、隊全体の指揮を執ります。

三角点ピークと看板表示のあるピークが同じとは限りません。猫魔ヶ岳の看板ピークは三角点ピークから東に10メートルほどずれたところ(地図上では0.5ミリ)にあります。ずれた理由は展望でしょうね。猪苗代湖が見える休憩しやすい場所に看板が置かれています。山は「映える」ポイントが大事なんですね。

読図採点の様子。本校は1ミリ西にずれていたようで、「惜しいね~」とのこと。

装備チェックを受ける本校パーティ。仮にビバーク(不時露営)となっても1晩過ごせるだけの装備がザックには入っています。山に行くときには高校山岳部経験者がいると安心ですよ。

24日。閉会式。

昨夜から降り続く雨のため室内にて開催。技術委員長より、天気図作成や読図、装備等について指導を受けています。これから、各校の秋~冬の合宿で学んでほしいことが満載でした。来年の県大会で成長した姿を見るのが楽しみです。

閉会式後、とある高校の顧問(昔私が教えた選手)が近づいてきて、「中野先生が来るようになって、大会が雨模様なんですけど(笑)」と。そういえば、彼と登った山で雨具を使わなかった山行は数えるほどしかありません。「雨男ですよね、先生」。聞くと、私が観戦しなかった初日(22日)は、雨に遭わず行動できたそうです。

映画「天気の子」のヒロイン天野陽菜は「祈るだけで晴れにできる力を持つ少女」という設定ですが、私は「祈らずとも雨にできる力を持つ中高年」のようです。パワー的には彼女より数段上です。なんと言っても、祈らなくても雨になるんですから。

解散後、福島に戻る土湯の道で、みるみる回復していく空模様をみながら、「存在が雨」ってなに? そんな哲学めいた命題を考えていました(笑)。

3人4脚?

9月27日朝、本校昇降口に一台のバスが…

その脇を生徒は怪訝そうな顔で通過していきます。それもそのはず、今日は2学期中間考査2日目。バスに乗ってどこかへ出かける企画があるはずがない。

バスに乗るのは、保護者の皆さんと本校教員。これからPTA主催の大学訪問で、福島大学、会津大学を巡ります。

大学進学は保護者の皆さんの理解があって叶うもの。生徒、保護者、教員がしっかりスクラム組んで目指さなければなりません。3人4脚?いえいえ、肩さえ組めば、足は結ばない方が速いに決まってます。3人6脚でフットワーク軽く行きましょう。

いってらっしゃ~い(やはり生徒は怪訝そう)

具体的に説明しなさい。

「傍線部Aとはどういうことか、具体的に説明しなさい。」国語の記述問題によく出てくるフレーズですね。

さて、9月22日午後、一台のバスが駐車場で生徒の乗り込みを待っていました。

以前に、こちらで紹介した放射線教育(「ドラえもんとエヴァンゲリオン」参照)のフィールドワークとして、飯舘村長泥地区視察に向かうバスです。実際に農地造成盛土エリアを見学し、机上の学びと実際を具体的に関連づけることができたでしょうか。

一方、一年生の午後は

本校OBの高橋さん(上段:市役所勤務)と菊田さん(下段:県立医大病院勤務)のお二人をお招きして、「さまざまな職業人に聞く」と題して、公務員や放射線技師のお仕事の様子をうかがいました。なんと、お二人とも高校時代はサッカー部所属。校是「文武両道」を実践してきた先輩の具体的なお話に、興味津々です。

机上の学びを具体化していく、東高の実践です。

お豆腐

正面玄関の脇にす座り込んでいる生徒がいます。あれ?何をしてるのだろうと近寄ってみると

美術選択の生徒が、キャンバスに木炭でデッサンをしているところでした。遠近法大活躍の様子。

黒い枠のような物を手に持ち、しきりに覗いているので何かなと思ったら、デザインスケールという秘密兵器。私は高校時代美術選択でしたが、こんなのなかったなあ。あればもっと上手に描けたはず(ということにしておこう)。

スケール覗いて直線でビシビシ描けば、コンクリートでできている校舎は無機質で硬質な絵になりそうですが、この生徒の描く校舎は丸くて、柔らかいお豆腐のよう。逆に、絵を見てから校舎を見上げると、どことなく丸く見えてくる不思議な感覚。

この生徒にとって、学校は柔らかい居心地のいい場所なのか、はたまた、この生徒が柔らかい優しい心持ち主なのか。

そのどっちでもあってほしいなと思う昼下がりでした。

ドラえもんとエヴァンゲリオン

ドラえもんの動力源は胸あたりにある原子炉という設定だったと記憶しています。アトムは名前どおりお腹の原子炉が動力源です。小学生の頃読んだ科学雑誌には未来予想図が描かれていて、原子力自動車、原子力列車、原子力飛行機などなど、身の回りに原子力が溢れている世界が描かれていました。

原子力災害を身近に体験し現実を見せられると、あの雑誌の未来予想は実現不可能な物ばかりですね。原子炉を積んで誰もが運転できる乗り物はこの先生まれることはないでしょう。原子炉で動き続けるロボットよりは、アンビリカルケーブルが外れ内部電源で活動限界が5分のエヴァンゲリオンの方が、今となってはリアルです。

さて、夢物語ではない現実をしっかりと見つめるためにも放射線教育は欠かせません。

県立医科大教授の田巻先生、環境省から山口さん、それから放射線リスクコミュニケーション相談員の皆さんをお迎えして、様々な放射線や除去土壌について学びます。

医療で活用される放射線についての学び。

世界平均と比べると日本は医療被曝の値が多いことがわかります。

被爆にも様々な種類があり、それぞれ線量も違います。

(除去土壌に関する講義は、別の仕事が入り撮影できませんでした。私自身が興味があっただけに残念。)

次回は、フィールドワーク。生徒は、机上だけにとどまらない(活動限界のない)、アクティブな学びを実践しています。